講演会『トキと身近な野鳥たち』講師:藤井 匠也(ZOO TIME園長、動物教育講演家)
みなさんこんにちは、
ズータイム園長です。
近い将来石川県でもトキの放鳥が行われます。
トキは決して観光のための道具ではありません。
トキとの共生は自然を守る覚悟がないと実現は難しいでしょう。
トキの安全な餌場の確保は必須ですが、鳥類の行動範囲はとても広いのでおそらく能登で放鳥しても
金沢市や白山市、富山県や福井県にもすぐに移動することでしょう。
ですからトキのための整備や工夫は良いことですが実際どれくらいの効果を発揮するかはわかりません。
しかし、実際に飼育してきたトキや佐渡で順調に繁殖している姿をみて、
トキの生きる力も信じたいものです。普段から田んぼで生きる野鳥もたくさんの種類がいて、
野鳥たちの逞しさに感動しています。
これは私の意見ですが、佐渡でもそうですが、ある程度の個体群がいて、分母が大きければ
ペア形成も上手くいく確立が増え、繁殖が軌道に乗るでしょう。
また農家の方々の負担ばかりが増えるよりも(減農薬や冬水田んぼの管理、費用、収穫量など)、
放棄された田んぼや空き土地のビオトープ化も進めていければ理想的です。
佐渡での生息数も毎年増え、数年後には石川県に渡ってくる可能性も十分あるでしょう(こちらの方が早いと思います)。
石川県でトキが野鳥として羽ばたく姿に期待が膨らみます。
【トキとわたしの関わり】
2010年にいしかわ動物園がトキの分散飼育を開始する前から、
トキを受け入れるために近縁種(クロトキ、ホオアカトキなど)のトキたちで飼育繁殖技術を確立。
近縁種で人工繁殖と自然繁殖の両方を成功させ実績を築く。
トキの分散飼育が決定後に佐渡トキ保護センターにて長期の飼育研修をさせていただく。
2010年にトキを受け入れ、初年度は人工繁殖に成功。
翌年からは自然繁殖に成功。繁殖したトキを佐渡へ移送する経験もさせていただく。
分散飼育先である長岡市トキ分散飼育センター、出雲市トキ分散飼育センター、多摩動物公園すべてを視察。
動物園で繁殖した個体が野生へ放鳥されることに感銘を受けると同時に、トキを通じて動物園の社会的役割の1つである種の保存を体現。
動物園がレクリエーション以外の役割を明確に示すことができた。これは本当に重要な事。
現在のズータイムの教育活動にも大きく影響している。